
誤嚥性肺炎と診断されると 、抗生物質による治療が開始されるとともに、発熱や痰などの症状が落ち着くまで、食事が止められます。
誤嚥性肺炎は嚥下能力(飲み込む力)の低下が大元の原因。
肺炎は治癒しても、また繰り返すことが多いのも誤嚥性肺炎の特徴です。
誤嚥性肺炎を繰り返している場合、主治医からその後口から食べることを一切禁止されてしまうこともあります。
しかし、誤嚥性肺炎になったからといって必ずしも口から食べられないわけではありません。
口から食べることを禁止される場合はどんな場合なのか、また再び口から食べるのに必要なことは何なのかお伝えします。
口から食べることが禁止される場合
次のような状況の時は、食べることで肺炎を悪化させたり、命を落とす危険もありうると考えられるため主治医の判断で口から食べることが禁止されます。
・肺炎発症直後
発熱があったり、痰でゴロゴロしており、呼吸状態も良くない状態。
意識状態も悪く、常に眠っているような状態。
・食べることで誤嚥を引き起こしているということが明らかに分かっている場合
食べているところをレントゲンで透視して見る嚥下造影検査や、嚥下の専門家による評価・観察で明らかに誤嚥していると判断できるような状態
食事が再開される前には嚥下の専門家による評価を
誤嚥性肺炎の症状が落ち着いたら、食事が再開される前に、嚥下の専門家による評価を行います。
嚥下の専門家には、耳鼻咽喉科医や言語聴覚士、摂食・嚥下障害看護認定看護師などがいます。
誤嚥性肺炎の治療で絶食期間が長いと、その間に嚥下能力が落ちてしまうこともあります。
嚥下機能の評価は、全身状態が落ち着いたらできるだけ早急にされるべきものです。
肺炎になる前に食べられていたものが食べられなくなっている可能性もあるので、スタッフが評価をするまでは、家族で勝手に食べさせたり、飲ませたりしてはいけません。
飲ませてはいけない理由についてはこちらの記事を合わせてご確認ください。
言語聴覚士の評価の方法についてはこちらの記事も合わせてお読みください。
それでもダメな場合は…
専門家による評価の結果、次のような場合は、食事が開始できないこともあります。
・嚥下能力の評価がしっかりとできない
認知症などでこちらの指示が理解されず、しっかりと嚥下能力を評価することができない場合。
検査だけはなく、リハビリを行うことが難しいほど理解力などが低下している場合。
食べる意欲そのものがない場合。
・ありとあらゆる対応をしても、誤嚥を繰り返す
リハビリや、食事形態、食事介助の工夫など、ありとあらゆる対応をしても誤嚥を繰り返してしまう場合
このような場合、口から食べることは難しいので栄養を摂る手段を考えていかなければなりません。
方法としては、胃ろう、鼻チューブ(経鼻経管栄養)、点滴(中心静脈栄養)などがあります。
▶参考記事
それでも本人が食べたいのなら…
ご家族が誤嚥性肺炎のリスクを理解していて、主治医や看護師、言語聴覚士などのスタッフのサポートが得られるのであれば、本人が食べたいものや大好きだったものを味わう程度に口にするという選択もありだと思います。
但し、これは本人の「食べたい」という意志がはっきりしているときに限ります。
本人の楽しみのために、好きなものを少し味わう程度のことは、スタッフのサポートがあれば可能です。
誤嚥性肺炎というのは、呼吸がしにくくなり、患っている本人にとってはとても苦しいものです。
食べることが苦痛につながることもあります。
家族の「食べさせたい」という思いだけで、食べさせることのないようにしてください。
逆に全く「食べたい」という意欲がないのであれば、それがその方の寿命と考え、延命治療を行わず穏やかに看取るというのも一つの選択肢なのではないか、と思います。
まとめ
誤嚥性肺炎になったら、一時的には絶食になりますが、必ずしも口から食べられないわけではありません。
もし、肺炎の症状が落ち着き、本人に食べる意欲がみられるようであれば、主治医や看護師などに相談してみてもよいかもしれません。
嚥下の専門家にきちんと評価をしてもらい、その結果、嚥下のリハビリをしたり、食事形態の工夫や介助の方法などを工夫することで、口から食べることも可能な場合があります。
もし嚥下の評価がされていない場合は、言語聴覚士などによる嚥下評価をしてもらうように依頼してみましょう。
それでも無理な場合は、今後のことを考えていかなければなりません。
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