
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の「卒中」は「突然倒れる」という意味があるそうですが、発症直後に本当にバタンと倒れてしまう場合というのはほんの一部です。
例えば、くも膜下出血の場合、突然「今まで経験したことのない頭痛」で発症することが多く、救急車で搬送されることがほとんどです。
それに対して、脳出血や脳梗塞の場合は、じわじわと経過することもあり、脳卒中だということに気がつかず自分で車を運転して来院され、診察で脳梗塞とわかり即入院となる方もとても多いのです。
軽い出血や梗塞であればよいのですが、場合によっては運転中に出血や梗塞がすすんで、手足の麻痺が進行したり、視野が欠けてしまったり、意識を失ってしまうこともありとても危険です。
脳卒中が疑われるような初期症状をいち早く確認できるのがACT FASTです。
ACT FASTでいち早く脳卒中に気づき、早目に治療を開始することによって後遺症が軽くなる可能性もあります。
脳卒中(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血)についてはこちらの記事も合わせてお読みください。
もくじ
ACT FASTでテストする
米国脳卒中協会がACT FASTというキャンペーンを推奨しています。
直訳すると、「すばやく行動せよ」ですが、FASTは脳卒中が疑われるときにチェックすることの頭文字を合わせたもので、非常に覚えやすくなっています。
F(Face 顔) 笑顔は作れますか?
笑顔になった時に左右同程度口角が上がるかどうかを確認します。
片側の口角が下がったり、そこからよだれが出たりする症状も見られることがあります。
A(Arm 腕)両腕をあげたままキープできますか?
両腕を床と水平になるまで挙げたまま、そのままキープできるかどうかを確認します。
片腕だけ、力が入らずたらんと下がってしまうと脳卒中による手の麻痺の前兆の可能性があります。
S(Speech 話し方)
いつもどおりしゃべることができるかどうか確認します。
言葉がうまく出てこなかったり、呂律が回っていない場合は言語障害の前兆の可能性があります。
T(Time 時刻)
このFace Arm Speechの3つのうち、一つでも当てはまる症状がある場合はすぐに119番で救急車を呼びます。
その時に確認してもらうことは、T(Time 時刻)です。
症状に気が付いた時間を確認してください。
発症時刻からどのくらい経過しているかで、治療法が変わってきます。
発症時刻が分かるかどうかが治療方針を決定するのに非常に重要な情報になるからです。
なぜ、早期治療が重要なのか?
FASTでチェックした結果、当てはまる症状がある場合、医療機関ではさらに診察、検査などを行い診断をします。
その結果、脳梗塞だった場合、血管を詰まらせている血栓を溶かす薬剤を使った治療を行います。
これを経静脈血栓溶解療法(rt-PA )と言います。
ただ、この治療を行うには1つ条件があります。
それは発症から4.5時間以内に治療を開始しなければならないという条件です。
症状に気がついて出来るだけ早く医療機関で診察を受けることで、この治療を受けられる可能性が高まります。
脳梗塞の後遺症は、脳梗塞が起こった脳内の位置と、ダメージを受けた脳神経細胞の範囲の大きさで重症度が決まります。
出来るだけ後遺症を小さくするためにも、初期症状に気がついたら早急に医療機関へ行くことが重要です。
rt-PA についてはこちらの記事に詳しく書かれています。
若い人でも脳卒中になるの?
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)というと、どうしても高齢者の病気というイメージがあるかもしれません。
しかし、今は少なからず若い人でも脳梗塞になる場合があるようです。
有名人の中でも、34歳の時に脳梗塞を発症した大橋未歩アナウンサーの例もあります。
年齢に関係なく、FASTの症状が見られたら、ACT FAST(素早く行動せよ)が大切です。
まとめ
自分、もしくは周囲の人がF、A、Sの症状にいち早く気づき、できるだけ早く治療を開始することによって、脳出血や脳梗塞の範囲を小さくできる可能性があります。
脳出血や脳梗塞の範囲が小さいということは、それだけ損傷される脳神経細胞も少なく後遺症も少なくなります。
はじめ症状が軽いと「救急車を呼ぶまでもない」「一晩様子をみよう」と思ってしまいがちです。
でもそうして来院が遅れ、後遺症が残ってしまった患者さんやそのご家族さんは、後になって「もっと早く病院に来ればよかった」と後悔されます。
最近では、30代で脳卒中を発症される方も増えてきています。
このACT FASTはぜひとも皆さんに覚えておいて頂きたいことです。
脳卒中についてはさらに知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。