
2018年秋にTBSで放送されている【大恋愛〜僕を忘れる君と】。
第1話の最後で、アルツハイマー病を専門とする医師侑市(ゆういち)が主人公尚(なお)のMRI画像を見て、「この患者、アルツハイマーの前段階だな」というシーンがありました。
そして続く第2話では尚が「アルツハイマー病の前段階」である軽度認知障害と診断されます。
認知症の前段階の状態のことを軽度認知障害と呼び、ここから認知症を発症することが多いと言われています。
この記事ではこの軽度認知障害についてできるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
【大恋愛~僕を忘れる君と】第1話についてはこちらの記事に詳しく書かれています。
もくじ
軽度認知障害とは
軽度認知障害とは、認知症予備軍もしくは認知症の前段階の状態です。
英語では、Mild Cognitive Impairmentといい、医療現場では頭文字を繋げてMCI(エムシーアイ)と言います。
実際にドラマの中でも、侑市がかっこよく専門用語「MCI」と言っていましたね。
軽度認知障害は健常者と認知症の方の中間の段階です。
正常とも言えないし、認知症とも言えない、いわゆるグレーゾーン。
診断基準は明確にされておらず、医師によってまちまちです。
軽度認知障害の5つの定義
- 記憶障害があると本人も自覚があり、家族も認識している。
- 日常生活では問題ない。
- 全般的な認知機能(判断力、思考力など)は問題ない
- 年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する
- 認知症ではない
軽度認知障害の検査
軽度認知障害が疑われた場合、患者さんやそのご家族からお話を聞く他に、次のような検査をすることがあります。
認知症のテスト
医療現場でよく使われる認知症のテストとしては「改定長谷川式簡易知能検査スケール」があります。
略してHDSーR(エイチディーエスアール)と呼ばれています。
ドラマの中で侑市が、尚にしていた「物忘れの検査」はこの検査になります。
この検査はつばめ自身も実際にやることが多い検査です。
この検査はとても簡単なので、家族や自分でもやることができる検査です。
HDSーRは30点満点で、20点以下だと認知症の可能性が高いと判断されます。
ただ、20点以上だからといってMCIではないとは言い切れません。
実際に、MCIの方の場合、20点以上取ることができる方も多くいらっしゃいます。
ただ、MCIの場合は特に記憶に関する問題で減点となることが多いです。
点数だけではなく、どのような問題で減点となったかも確認すると良いでしょう。
画像検査
MCIの段階では画像には現れないこともあります。
認知症の前段階の所見を見つける目的もありますが、認知症と同じような症状を表すほかの病気がないか確認する目的も大きいです。
CT、MRI
SPECT (脳血流シンチグラフィー)
MCIと診断されると必ずアルツハイマーになるのか?
これに関しては、2つのポイントから考えてNOです。

MCIと診断されたからと言って、必ず「アルツハイマー型認知症」になるわけではない
認知症には4つのタイプがあります。
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管性認知症
- 前頭側頭型認知症
- レビー小体型認知症
認知症の4つのタイプについてはこちらの記事をご参照下さい
MCIがあるとアルツハイマー型に移行する場合もありますが、別のタイプに移行する場合もあります。
MCIの段階でこの後、どのタイプの認知症に移行するか見極めることは難しいです。
- 記憶障害あり
- MRIで海馬が萎縮している所見あり
- 脳血流SPECTで後部帯状回の血流が低下を確認
このような所見がみられるとアルツハイマー病の前段階のMCIと判断される場合もありますが、実際には難しいようです。
ドラマの中でも、アルツハイマー病の権威である侑市だからこそ、尚のMRI画像をみて、MCIを見抜いていましたが、その時に「うまく説明できないが」という表現をされていました。
海馬は脳の中の記憶の中枢です。
アルツハイマー病ではまずこの海馬から病変が起こります。
海馬の役割についてはこちらの記事をご覧ください。

MCIと診断されても、適切な対応をすることで回復することは可能
MCIから認知症に症状が進展する人の割合は年平均で10%と言われています。
参照:https://info.ninchisho.net/mci/k40
逆を言えば、全ての人が認知症に移行するわけではありません。
そして、認知症を予防するような生活習慣を心がけることで、回復することは可能です。
ドラマの中で侑市が薦めていたのは、適度な運動、バランスの良い食事、睡眠でした。
尚は「普通の健康法じゃない」と憤慨していましたが、認知症予防にはこの3つがまず基本となります。
実際に軽度認知障害と診断された方は
是非、読んでみてください!
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早期発見が大切
あれ、ちょっと普通とは違うな、と思うような症状がある場合には、できるだけ早く専門医を受診しましょう。
誰でも自分のもの忘れの症状を認めたくない、老いを認めたくないという気持ちはよくわかります。
でも早めに対処することで、認知症を予防できたり発症を遅らせることは可能です。
勇気を出して受診してみてください。
どの診療科に受診したらいいの?
脳神経外科や神経内科、精神科、心療内科など、病院によって対応する診療科が違う可能性があります。
予め受診する予定の病院に問い合わせてから出かけるのをお勧めします。
もし、かかりつけ医がいるのであれば、その先生に一度相談すると紹介してくれるかもしれません。
まとめ
- 認知症の前段階である軽度認知障害MCIについて詳しく説明しました。
- MCIと診断されたからといって、アルツハイマー病に必ずなるわけではありません。
- MCIの段階で適切な予防対策ができれば、回復する可能性も十分あります。
- 将来認知症に進行させないためにも早めに予防することが肝心です。
☆ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』について書いた記事はこちらにまとめました。
私つばめは言語聴覚士として認知症の方、そのご家族の方と日々接しています。
認知症の現実を日々目の当たりにしているからこそ、認知症になる方を一人でも減らしたいと思っています。
【大恋愛〜僕を忘れる君と】というドラマをきっかけに、アルツハイマーのこと、認知症のことを多くの方に知っていただきたいと思って、記事を作成しました。
認知症は、今すぐ対策を始めることで予防できる可能性は高いです。
軽度認知障害の心当たりがある方も、そうでない方も、知っておいて頂きたい内容をお伝えしているのがこのメール講座です。