
摂食嚥下障害があって口から食べられず、寝たきりになっている高齢者はよく、口の乾燥に悩まされます。
本人が口が渇いて、何か飲みたいと訴えていても、そもそも嚥下障害があるので、水を飲ませるわけにはいきません。
こういう方は口が開いたままのことも多いのですが、自分で口を閉じることを意識する、というのも難しい状態です。
特に秋から冬は空気が乾燥してくる上に、寒くなってくると室内の暖房などによっても乾燥しやすくなります。
口の中が乾燥している状態というのは、本人の不快感、痛みを伴いますし、風邪や肺炎などを引き起こしやすくなるため、対処が必要となります。
ここでは、寝たきり高齢者の口の乾燥について原因と対処法をお伝えしたいと思います。
もくじ
口が乾燥する原因
口の中が乾燥してしまう原因は次のようなものが考えられます。
口呼吸
寝たきりの高齢者は歯がない方が多くみえます。寝たきりで食事をしていないため入れ歯も装着していないままのことが多いです。
歯がない状態だと、唇がしっかり閉じることが難しくなります。
必然的に口から空気が出入りするため、乾燥を引き起こしやすくなります。
また、脳卒中後の後遺症で唇に麻痺があると、しっかり閉じることが出来なくなるため、乾燥しやすくなりますし、鼻で呼吸することが難しくなり、口呼吸になる場合があります。
環境
秋から冬は空気が乾燥するとともに、特に寒くなってくると暖房によってさらに空気が乾燥しやすくなります。
空気が乾燥する季節は口の中も乾燥しやすくなります。
唾液分泌の減少
口の中は唾液で潤っているのが一番良い状態ですが、年を取ってくると唾液の分泌は減ってきます。
さらに、寝たきりで食事していない、おしゃべりをしていないということは口を動かす機会がとても少なく、唾液が分泌する機会も少なくなってしまいます。
疾患
シェーグレン症候群という病気になると、唾液が出にくくなります。
薬の副作用
抗うつ剤、抗パーキンソン剤、鎮痛剤、降圧剤などの薬の副作用で、口が乾燥しやすくなることがあります。
口が乾燥してしまうと…唾液の作用が働かない
口の中を常に潤している唾液は一日1L以上分泌されています。
自然と出てくるものなので、普段はあまり意識することはないかもしれませんが、唾液にはたくさんの作用があります。
唾液が少なくなってしまうとこれらの作用が働かなくなり、問題が起こってきます。
潤滑作用
口の中が唾液で潤っているからこそ、食べ物を咀嚼したり、飲み込んだり、声を出したりしやすくなります。
唾液が少なければ、これらのことをしにくくなるのはもちろん、口を動かしにくくなることによって唾液も分泌しなくなってしまうので、負の悪循環になってしまいます。
洗浄作用・抗菌作用
口の中に残った食べ物のカスや、細菌、微生物などをまとめて綺麗にする作用があります。
口の中が乾燥して唾液が少ない状態だと、この洗浄作用が働かず、虫歯や歯周病になりやすかったり、口臭がひどくなったりします。
また風邪を引きやすくなりますし、ひどい場合には肺炎を引き起こすことにもなります。
pH緩衝作用・再石灰化作用
食べ物を食べたり、飲んだりした後は、口の中が酸性になりやすいのですが、唾液によってpHが中和され、虫歯を防ぐ作用があります。
また飲食後に溶けかかった歯の表面を修復して虫歯を防ぐ再石灰化作用もあります。
唾液が少なくなれば、これらの作用が働かなくなり、虫歯になりやすくなります。
粘膜保護作用
唾液は口の中の粘膜を守る働きをしています。唾液が少なくて乾燥すると、口の中が傷つきやすくなったり、舌がひび割れてしまったりして、痛みを伴います。
痛むために食べ物が食べられなかったり、しゃべりにくくなることもあります。
溶解作用
食べ物を噛んで唾液と混ざることで、味がよく分かります。
唾液が少ないと、味がよく分からなくなる味覚障害が起きてしまいます。
乾燥対策
では口の中の乾燥を防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは次の3つの対処法をお伝えしたいと思います。
- 口を湿らせる
- 部屋の環境を整える
- 唾液の分泌を促す
1.口を湿らせる
摂食嚥下障害があると、水分を飲むことはリスクが高くて難しくなります。ガーゼや口腔ケア用のスポンジなどで口の中を湿らせるだけでも効果があります。
しかし、湿らせたその時はよいのですが、すぐ乾いてしまいます。
そのため、お口の中用の保湿剤を口の中に薄く塗ることをおすすめします。
保湿剤もたくさん出ているのですが、例としておすすめするのは、ティーアンドケー社が出している、ペプチサル ジェントル マウスジェルです。
このマウスジェルは唾液の力に着目して開発されており、口の中を乾燥させてしまうようなアルコールや発砲洗浄剤(ラウリル硫酸ナトリウム)は入っておらず、低刺激性で乾燥している粘膜にも安心して使うことのできるジェルだと思います。
よくあるうがい液や、マウスウォッシュなどには、アルコールが含まれていたり、歯磨き剤にはラウリル硫酸ナトリウムが含まれているものがありますが、口の中が乾燥する方にとってはさらに乾燥を助長する可能性があるので、できればこれらの成分が含まれていないものをお使いになるとよいと思います。
もし、マウスケアのときにマウスウオッシュを使いたいという場合には、おすすめの保湿剤と同じティーアンドケー社が出している、ペプチサル マウスウォッシュがおすすめです。
保湿剤と同様、アルコールなど乾燥を助長するような成分は入っていません。
私も試しに使ってみたことがあるのですが、このマウスウォッシュはすぐに味が消えるのに、口の中がとても滑らかになって気持ちがよかったです。
市販のマウスウォッシュは味が濃くて、食事の前には使うことを躊躇してしまうのですが、このマウスウォッシュなら食事前に少し口の中をすっきりさせたいときにも利用できると思います。
食事前に潤すことによって、食べ物も飲みこみやすくなりますし、むせることも防ぐことができます。
保湿剤とマウスウォッシュの使い分けですが、メーカーさんのお話では、「マウスウォッシュは化粧水、保湿ジェルは乳液のようなイメージ」と説明してくださいました。
この商品はマウスケア製品としては非の打ちどころがない良品と思うのですが、1点短所を挙げるとすると、価格が高いことでしょうか。
特に保湿剤は量に比べたら高く感じると思います。
でも1回の使用料はとても少ないですし、例えば乾燥のひどい時は保湿剤、乾燥がおさまってきたら日頃のマウスケアでマウスウォッシュを使う、という方法でもよいと思います。
2.部屋を加湿する
可能であれば加湿器などを用いて、部屋を加湿するとよいと思います。
ただし、加湿器はきちんとお手入れをしないとカビや細菌をまき散らしてしまう可能性があるので、その製品に合わせてメンテナンスをしてください。
病院や施設などで加湿器を置くことが難しいのであれば、就寝時に濡れタオルなどをそばにかけておくだけでも違うようです。
3.唾液の分泌を促す
唾液そのものの分泌を促す方法として、口唇や舌の体操や唾液腺マッサージがあります。
口唇の体操
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各運動を大きく、ゆっくり10回ずつくらい行いましょう。
舌の運動
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これも大きく、ゆっくり10回ずつくらい行ってください。
唾液腺マッサージ
もしご自分でできない方の場合は、唾液腺マッサージをしてあげると唾液が分泌されやすくなります。
唾液は、耳下腺(じかせん)、顎下腺(がっかせん)、舌下腺(ぜっかせん)の3か所の唾液腺から分泌されます。
舌下腺は指三本くらいを顎の舌の下あたりにあてて小さくゆっくり円を描くようにマッサージします。頬杖をつくような感じで顔に手を当て、耳下腺、顎下腺の位置を意識しながら小さくゆっくり円を描くように動かしてみましょう。
あまり強く刺激しないようにしてください。
不安な場合は、必ず主治医や看護師に確認するようにしてください。
まとめ
口の中が乾燥してしまうと、いざマウスケアをするときも痛みがともなったり出血したりして、マウスケアそのものがしにくくなります。
保湿剤などを上手に使って、口の中の乾燥対策をしてみてください。
本文でおすすめした保湿剤など、ペプチサルの商品のお試しセットもあります。
是非、お試しくださいね。
摂食・嚥下障害についてさらに知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。
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