
在宅で生活している嚥下障害の方の食事を作るのはとても手間がかかるものです。
介護は24時間365日続くため、介護する側の負担も減らしていくことも必要となります。
介護者の負担を減らすのに、市販の嚥下食を利用するのも一つの手です。
昨今の高齢化社会に伴って、各食品会社は競い合うように嚥下食を開発しており、種類も品数も豊富に出回ってきています。
消費者側はいろいろ選ぶことができるという自由がある一方で、種類が多すぎて分かりにくい、どれが食べられるレベルのものなのか分かりにくいということもあると思います。
ここでは、市販の嚥下食の見分け方や入手法、私がおすすめする嚥下食をご紹介したいと思います。
もくじ
嚥下食と介護食の違い
高齢者の咀嚼のしにくさや、飲みこみにくさに対応した食品の名称として一般的に「介護食」と言われていることが多いです。
介護食の内容としては、ゼリー食、ミキサー食、ペースト食、キザミ食などがあります。
嚥下食も介護食に含まれることもありますが、1点気をつけて頂きたいことがあります。
それは、ミキサー食やキザミ食は、ものによっては飲みこみにくいものもあるということです。
特にキザミ食は、嚥下には特に問題がないけれど、歯の状態が悪く咀嚼がしにくい方に合わせた食形態となります。
嚥下に問題のある方の場合、細かく刻んだものは一つにまとめることが難しく、口やのどに食べ物が残りやすくなりむせや誤嚥の原因になることがあるので注意が必要です。
ただ、最近の市販の介護食は、形を細かくしてあるものよりも、やわらかさや飲みこみやすさを重視したソフト食などが主流になってきているように感じます。
そして、形態、食感だけではなく、味も見た目も重視されたものも多く出回っています。
ほぼ介護食=嚥下食と考えても良いのではないでしょうか。
インターネットで検索するときには「介護食」というキーワードでも、嚥下食を見つけることができます。
嚥下食の見分け方
食品会社各社から、嚥下障害のレベル別にさまざまな種類の嚥下食(介護食)が販売されています。
嚥下障害の方のレベルに合ったものを選ぶにはどうしたらよいのでしょうか?
嚥下食のレベルを知る
普段食べている主食はどのような形態でしょうか?
- ミキサー食
- お粥
- 柔らかく炊いたご飯(軟飯)もしくは普通の米飯
この形態と次に紹介する分類表示と照らし合わせることで、自分の良いレベルに合った嚥下食を選択することができます。
ユニバーサルデザインフード(UDF)
日本介護食品協議会が制定した基準で、その基準に見合う食品に「ユニバーサルデザインフード」としてロゴマークが商品パッケージに使用されています。
容易にかめる
歯ぐきでつぶせる
舌でつぶせる
かまなくてよい
の4つの区分がされています。
こちらのページにはユニバーサルデザインフードについて分かりやすく説明されています。
http://nursing-diet.net/sort-kind.html
スマイルケア食
農林水産省が平成26年11月に定めた「介護食品」の名称です。
噛むこと、飲みこむことが難しい方だけではなく、健康な高齢者も含めての食の形態の指標が必要とのことで作られたそうです。
チャート図があり、質問に答えていくと自分にあった区分を選ぶことができるようになっています。
http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201501/1.html#anc02
嚥下食を
どのように入手する?
いちばん手軽に購入できるのは、いつも買い物に行くスーパーやドラッグストアだと思います。
介護用品売り場などにあると思います。
ユニバーサルデザインフードUDFの区分にあったものを選んで購入してください。
インターネットでももちろん購入は可能ですが、ケース売りの場合がほとんどで、味や形態が合うものとわかっている場合であればよいですが、試しに1つ、2つ買ってみるということは難しいかもしれません。
市販の嚥下食を使う
メリット・デメリット
メリット
手間がかからない
解凍したり、温めたりするだけで簡単に準備できます。
いざという時のストックになる
忙しい時に使うのももちろんですが、万が一、災害などがあった場合のストックにもなります。
レベルに合った食事を提供できる
区分に合わせた食形態になっているので、その方の嚥下能力に合わせた食事を提供することができます。
デメリット
コストがかかる
家で食事を作る時に比べて、市販の嚥下食を使う時にはどうしてもお金がかかってしまいます。
同じ味なので、飽きる
同じものを何度も食べているとどうしても飽きてしまいます。
食感も同じなので、普通の食事よりもレパートリーが少なく飽きやすい傾向はあるようです。
市販の嚥下食の使い方
このようなメリット、デメリットを踏まえると、次のように市販の嚥下食を使うとよいのではないかと思います。
食事の一部を市販のものにする
食事の全部を市販のものにするのは、コスト的にも厳しいですし、同じようなものを毎日食べていると飽きてしまいます。
そこで食事の一部分だけを市販のものに置き換えるのはいかがでしょうか。
例えば、どうしても食べにくい魚類、肉類は市販の食べやすい嚥下食を使い、その他は家庭で作った食事をとるようにするなどです。
また、ユニバーサルデザインフード(UDS)「歯ぐきでつぶせる」「容易にかめる」レベルの形のあるものを食べることが出来る方でも、UDS「かまなくてよい」レベルのペースト状のものを使って、肉や魚などまとまりにくいもののソースとして上にかけて使うこともできます。
忙しい時だけ使う
常に何種類か嚥下食をストックしておいて、忙しくて食事を作る余裕がない時に利用するようにします。
普通のレトルトの食品を使うのと同じ考え方ですね。
万が一の際の、備蓄にもなります。
つばめのオススメ嚥下食
実際に患者さんやそのご家族から評判の良かった嚥下食品をご紹介します。
摂食回復支援食 あいーと (イーエヌ大塚製薬株式会社)
この「あいーと」は私つばめが、全力でオススメできる嚥下食です。
嚥下食というと、どうしてもやわらかさ、均質さが求められるため、ミキサーにかけ形のないものがほとんどです。
嚥下障害のある方が安全に食べるためとはいえ、見た目、味ともに、あまり食欲の出るような食事ではないのが常々残念に思っていました。
ところが、この「あい―と」は肉でも、魚でも、野菜でも、見た目は普通のお料理の状態ですが、舌でつぶすことができるほど柔らかいのです。
そして、実際に食べても、とても美味しい。
ユニバーサルデザインフード(UDS)の「容易にかめる」から「かまなくてよい」レベルの方まで幅広い方に利用ができます。
(あい―とはUDSの表示はされていないようです)
この「あい―と」があったから、食べられるようになった患者さんもいます。
夏にはうな重、お正月にはお節料理とご馳走もメニューにあります。
難点はコストが高く、日常的に利用するのは厳しいかもしれません。
例えば、お祝いの時、おめでたい時などのハレの日の食事に利用されてはいかがでしょうか?
セットではなく単品でも購入できますよ。
こちらはエビチリ。
嚥下障害の方はエビを食べるのは難しいですが、こちらの商品なら食べられるかもしれません。
商品の詳細についてはこちらのリンクから http://www.ieat.jp/
フジッコのソフトデリ「漬物」
嚥下障害の方はお粥を食べる方が多いのですが、その際、患者さんからよく「漬物があるとご飯が進むのだけれど」というご希望をきくことがあります。
でも漬物は高齢者嚥下障害の方が食べにくいものの一つです。
さらに塩分制限のある方にはなかなか勧めることができません。
でもこのフジッコのソフトデリ「漬物」は柔らかくて飲みこみやすく調理されています。
味は漬物。柔らかさは煮物。しかも減塩。
味もしっかりしていて、これがあればごはんが食べられると喜ばれた患者さんもいらっしゃいます。
つぼ漬けだけではなく、きゅうり漬け、赤しば漬けもあります。
まとめ
今後ますます高齢者が増えていくにしたがって、高齢者が食べやすい嚥下食の開発はどんどん進むと思います。
介護の負担を減らすだけではなく、食の楽しみを満たすことができる市販の嚥下食。
その方のレベルに合った嚥下食を、メリット、デメリットを踏まえながら、上手く利用して頂くとよいと思います。
新しい情報が入り次第、更新していきたいと思います。
摂食・嚥下障害についてさらに知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。