ユマニチュードは本当に「魔法?」言語聴覚士がリハビリ現場で実践してみた

   

sponsored Link

今、認知症ケアで話題になっているのが「ユマニチュード」という手法です。

以前、NHKの「クローズアップ現代」や「あさイチ」などにも取り上げられて、その効果のほどは「まるで魔法のような」と形容されるほどです。

基本的には、看護、介護など、認知症の方の日常のケアをする職種向けのようですが、私もリハビリで認知症の方と接することが多いので、実際にどのような手法なのか調べ、実践してみました。

その実践してみて感じたことも含め、お伝えしたいと思います。

 

ユマニチュードとは

ユマニチュードとはイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏によって作り出された認知症ケアの技法です。

1995年、2人はユマニチュードを以下のように定義づけました。

さまざまな機能が低下して他者に依存しなければならない状況になったとしても、最期の日まで尊厳をもって暮らし、その生涯を通じて”人間らしい”存在であり続けることを支えるために、ケアを行う人々がケアの対象者に「あなたのことを、わたしは大切に思っています」というメッセージを常に発信する―――つまりその人の”人間らしさ”を尊重し続ける状況こそがユマニチュードの状態である

引用元:本田美和子ら著『ユマニチュード入門』

ユマニチュードは英語ではHumanitude、まさに人間らしさという意味です。

 

ユマニチュードの手法

ユマニチュードには基本の4本の柱があります。

「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つです。

一つずつ見ていきましょう。

見る

正面から顔を合わせて、アイコンタクトができる位置から相手を見ます

寝たきりの方や車いすの方へはどうしても上からのぞき込むような形になりがちですが、視線を合わせるためにこちらが動きます。

 

話す

相手に対して何かをする場合には必ず声かけをします。

認知症の方はこちらから話しかけても反応がない場合があります。

そういう場合でも、その場で行っている行為を言葉にしたり、「よいですね」「気持ちいいですね」などのポジティブな言葉がけをします。

 

触れる

赤ちゃんに触れるときのように、広く、優しく、ゆっくり触れます

ケアの場合や点滴・吸引などをする場合に嫌がる相手の腕を押さえつけるようなことがありますが、それは恐怖や苦痛でしかありません。

 

立つ

本人が自分の力を最大限に使うように仕向けます。

足の裏が自分の体重を支えるようにお手伝いするのみです。

決して持ち上げてはいけません。

 

ユマニチュードの実践

sponsored Link

ユマニチュードはケアをはじめる前から終わった後まで以下の5つのステップを踏んで実践します。

  1. 出会いの準備
  2. ケアの準備
  3. 知覚の連結
  4. 感情の固定
  5. 再会の約束

 

この5つのステップをリハビリにも応用して実践してみました。

 

1.出会いの準備

リハビリを開始するときには、まず患者さんのお部屋にお伺いします。

その際、部屋に入る前には必ずノックをしたり、お名前を呼んだりし、お返事があってから入室します。

相手に、人と会う準備、心づもりをしてもらいます。

 

2.リハビリの準備

いきなりリハビリをはじめるのではなく、「あなたに会いに来ました」という姿勢で話しかけます。

その日の体調や、食欲、睡眠などについて確認し、リハビリをすることへの同意を得ます。

もし、断られたり、気が進まないようであれば、時間を変えてまた伺うようにし、無理にリハビリをすすめるようなことはしません。

 

3.知覚の連結

ユマニチュードの「見る」「話す」「触れる」を意識しながら、リハビリを行います。

構音訓練や、嚥下訓練では顔に触れることもありますが、触れ方にも注意します。

 

4.感情の固定

リハビリで昨日よりも今日出来たことを前向きに評価します。「またリハビリをやりたい」という感情記憶を残すようにします。

 

5.再会の約束

次回のリハビリの約束をします。

これによって社会とのつながりを取り戻したという実感が生まれます。

 

実践してみて思ったこと

正直なところ、ユマニチュードを実践するというのは考えてみれば、ごくごく人として当たり前のことだと改めて思いました。

当たり前の事をする、というだけで「魔法のような効果」が出るということは、逆に言えば、ケアする側がいかに日頃から人として当たり前のことが出来ていないのか、ということを痛感させられます。

その点は医療スタッフとして反省すべき点だと思います。

看護師さんや介護士さんに比べて、リハビリはお一人お一人じっくりと時間をとって接することができます。

ユマニチュードの手法を使うと、こちらのことを信頼して、安心してくださるようで、スムーズにリハビリの課題を行うことができたり、笑顔が増えるということは実感できました。

こうした変化は私たちスタッフにとってもやりがい、満足感につながります。

ユマニチュードはどちらかというと、医療スタッフが用いる手法で、在宅で看護、介護している家族が実践するのは、やや難しいところがあるのではないかと感じました。

なかなかご夫婦や親子で正面から顔を合わせて、話しかけるのは…照れくさいところもありますよね。

もちろん家族でも実践できれば、とても素晴らしいと思います。

イソップ物語のなかに「北風と太陽」という物語がありますが、ユマニチュードはまさにこの物語の「太陽」のようだと思います。

遠回りのように思えますが、最終的にはケアする側もされる側も双方幸せになれる手法だと感じています。

 

 

ユマニチュードがなぜ効果があるのか

認知症の方は時々、攻撃的な言動をされることがあります。

それは、脳の中でストレスホルモンが貯まってしまうことによって起こるようです。

異常行動が起これば、介護する家族やスタッフは怒ったり、時には常に監視したり、抑制せざるを得ないこともあります。

そのことがさらにストレスをためてしまうことにつながります。

ユマニチュードという手法を用いることによってこの悪循環を断ち切ることが出来ます。

それは、人として尊重され、優しく触れられることで、脳内のストレスホルモンが減るからです。

結果的に行動も落ち着いてくるのです。

 

 

まとめ

私は今回こちらの本を参考に実践してみました。

 

まずはこの本に書かれていることを意識するだけでもユマニチュードの効果を感じられるのではないかと思います。

イラストもカラーで可愛らしい絵で描かれており、とても分かりやすくオススメです。

この本にはユマニチュードの基本的な事柄が書かれており、私は今後もユマニチュードの手法を用いながら認知症の患者さんのリハビリをしていきたいと考えています。

ユマニチュードは、厳密には「人とは何か」「ケアする人とは何か」を問う哲学と、それにもとづく150を越える実践技術から成り立っているそうです。

もっと本格的に学びたい場合には、Humanitude Japon (ユマニチュード研修案内)で、講習会が開催されているので、そちらに参加してみるのも良いのではないかと思います。

 

 

sponsored Link

 

 

 - 未分類 ,