
脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を発症し、病状が落ち着くと、回復期リハビリテーション病棟で集中的なリハビリが行われます。
回復期でのリハビリは、手足のマヒなど失った機能を取り戻す訓練も行いますが、退院した後、できるだけ自分の力で自宅で暮らすことが出来るようになることが大きな目標となります。
そのためには、退院した後の新生活を想定してリハビリを行う必要があります。
しかし、患者さん本人やそれを支える家族にとっては、入院中は現状のことにしか目が向かず、退院した後のことまでなかなかイメージがつかない方がほとんどではないでしょうか?
退院した後は、介護で大変になるのではないか、と不安な気持ちを抱えている方もいるかもしれません。
でも、退院した後の新生活で本人や介護する家族の負担が少しでも減るように、介護保険制度と介護サービスがあります。
この記事では、退院後の新生活を支える、介護保険制度と介護サービスについてまとめてみました。
もくじ
介護保険とは
歳をとると、病気になったりケガをしたりして、人の手助けが必要となる場合があります。
食事や排泄などの世話や、リハビリ、日頃の健康状態の管理などが必要な方に、その方の状況に応じて必要なサービスが受けられるように給付を行うのが介護保険制度です。
この介護保険は65歳以上の要介護、要支援の認定を受けた方が利用できます。
(40~64歳までの方は16の特定疾病により介護が必要となった場合に利用できます)
要介護認定
軽い方から重い方へ、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の7段階に分けて認定されます。
この要介護認定によって、介護保険の利用限度額が決まってきます。
要支援1,2とは
日常生活は自分で行うことが状態ですが、予防介護サービスを受けることによって今後要介護状態になることを防ぐ可能性がある段階です。
要介護1~5とは
日常生活上で何らかの介護が必要な段階です。
要介護3以上で排泄、食事、入浴、着替えなど全面的に介護が必要な状態となります。
要介護5では寝たきりで、コミュニケーションも難しい状態となります。
どんな介護サービスを受けることができる?
この記事では脳卒中後の方を想定して、要介護の認定を受けた方が利用できる介護サービスを紹介します。
介護サービスは大きく分けて3種類あります。
- 居宅サービス
- 施設サービス
- 支援サービス
1. 居宅サービス
退院後に自宅で生活しながら、サービスを受ける場合に利用できます。
自宅にスタッフが訪問するサービス
要介護度が高い場合や、病院やリハビリに通うことが難しい場合、介護者の負担が大きい場合はスタッフが自宅を訪問するサービスを利用します。
訪問介護(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーや介護福祉士が訪問し、入浴や食事、排泄などの介護や、掃除、洗濯、調理などの生活支援、通院などの送迎などを行います。
訪問入浴介護
入浴車で自宅を訪問し入浴の介護をします
訪問看護
看護師が訪問し、バイタルサイン(血圧、体温、呼吸、脈拍など)を確認し、療養上の世話をしたり、病状の管理をします。
訪問リハビリテーション
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訪問し自宅の状況に合わせたリハビリをします。
居宅療養管理指導
医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士が訪問し療養上の管理・指導を行います。
施設に通って受けるサービス
施設に通うことのできる状態であれば通って受けるサービスを利用することができます。
外出することがなかなか難しい場合には自宅から出るだけでもいい気分転換になりますし、他の利用者さんとの交流もできます。
介護する家族が日中は自宅にいない場合などにも利用されることがあります。
通所介護(デイサービス)
日中、利用者が施設に通い、食事の介助や入浴、レクリエーションなどを受けることが出来ます。
施設によっては送迎バスが利用できることもあります。
通所リハ(デイケア)
日中施設に通い、必要なリハビリテーションを受けることが出来ます。
短期間施設に入所するサービス
短い期間だけ施設に入所するサービスもあります。
入所できる期間は要介護度によって異なるので確認が必要です。
介護する家族の急用や、休息のために利用されることもあります。
医療的なサポートが必要な場合は医療型のショートステイを利用することも可能です。
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
その他
自宅で生活するために必要な福祉用具のレンタルや購入費、また必要な住宅改修にかかった費用も介護保険が利用できます。
要介護度に応じた支給限度額の範囲内で、かかった費用の1割は自己負担になります。
指定された業者を通じて利用する必要があります
福祉用具貸与(レンタル)
車椅子、介護用ベッドなどは、使ってみて合わない場合もあるので、試しに使ってみることもできるレンタルを利用するのが便利です。
特定福祉用具販売
衛生的にレンタルするのは好まれないような、ポータブルトイレ、入浴用の椅子などは特定福祉用具販売の制度を利用すると、必要な福祉用具の購入費が年間10万円までかかった分については1割の自己負担で購入することができます。
住宅改修
自宅で安全に生活するために必要な手すり、段差の解消のためのリフォーム費用なども介護保険を利用することができます。
2. 施設サービス
何らかの原因で自宅で介護することが出来ない場合、施設に入居して受けるサービスです。
入所する施設は3種類あります。
介護老人保健施設(老健)
自宅で生活するにはまだリハビリが必要と判断される場合に、入居できる施設です。
自宅復帰が目標となるため、施設によっては入居できる期間が定められていることがあります。
入居できるのは、短くて3ヶ月、最大でも半年までが大半です。
リハビリを集中して受けられる施設もあります。
また、看護師が夜間も常駐しているので、医療的なサービスも受けることができます。
特別養護老人ホーム(特養)
常に介護が必要となる要介護3以上と認定された方で、自宅での介護は難しい場合に入居できる施設です。
医療的なサービスはできないため、入居中に治療が必要となった場合には病院へ入院することになります。
入居費用は非常に安く設定されているため、希望者が多く入居できるまでに時間がかかります。
介護療養型医療施設
病状は安定しているけれど、医療的なサービスも必要、全面的に介護が必要とされる方が対象となる施設です。
病院内に併設されていることが多いです。
国の方針として、この介護療養型医療施設は減らしていく方向になっています。
3. 支援サービス
介護保険にはここまでに説明してきたように、たくさんの介護サービスがあります。
でも、実際に利用するとなると、要介護度によって、利用限度額がどのくらいでどのサービスが必要で、どのくらいの頻度で利用できるのか、自分で判断することはとても難しいです。
代わりに、介護支援専門員(ケアマネージャー)が、必要な介護のプラン(ケアプラン)を立ててくれます。
利用限度額の範囲内になるように、本人や介護する家族の希望も聞きながら、必要な介護サービスや福祉用具の手配などもやってくれます。
新生活への心構え
退院後の自宅での新生活に向けて、心掛けていただきたいことは次の2点です。
医療相談員とよく相談する
介護保険やそれを利用したサービスについては、医療相談員(医療ソーシャルワーカー、MSW)が相談にのってくれます。
介護保険のこと、申請の仕方やそのタイミング、分からないことはどんどん医療相談員の方に話をしてみましょう。
その方の状況に応じて、必要な情報を提供してもらえます。
退院後は無理をせず、介護サービスに頼る、甘える
退院後はご家族が張り切って介護をしようと意気込んでいるかもしれません。
でも、介護は24時間365日休みなく続きます。
そして、それが長期間にわたることも多いです。
せっかく本人さんが自宅で生活できるように頑張っても、介護する家族が倒れてしまっては、せっかくの自宅での生活が叶わなくなってしまうこともあります。
国民みんなで支える介護保険という制度があるのですから、利用できる介護サービスは利用して、肩の力を抜いて新生活を送りましょう。
何か不安なことがあれば、担当のケアマネージャーにどんどん相談しましょう。
まとめ
脳卒中後に回復期リハビリテーション病棟に入院できる期間は発症してから、150日(最大で180日)と定められています。
この限られた期間のなかで、集中的にリハビリを行っても、自宅で生活するのにはどうしても手助けが必要となる面が残ることが多くあるでしょう。
そういう場合にこそ、介護保険のサービスを上手に利用することで、自宅での新生活を楽にすることが可能です。
介護する家族だけで抱え込むのではなく、できるだけ介護保険のサービスを利用して、介護される本人さんも、介護する家族も幸せな自宅での新生活が送れるとよいと思います。
この記事は以下を参考にして作成しました
みんなの介護 https://www.minnanokaigo.com/guide/care-insurance/
安心介護 https://ansinkaigo.jp/knowledge/245#1
回復期リハビリについてはこちらの記事をご覧ください
介護サービスにかかった費用も医療費控除の対象になります
脳卒中についてはさらに知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。