
この記事では脳梗塞の治療法の一つである、rt-PA静脈注射療法について詳しく説明したいと思います。
私もこの薬を使った患者さんを診た経験が何度かあるのですが、本当に後遺症がほとんど残らず退院されました。
この薬の効果はすごいと実感したものです。
この治療を受けるためには脳梗塞が起こってから4時間半以内に治療を開始しなければなりません。
この短い時間の間に、医療機関に搬送されて、診察、検査した結果脳梗塞と診断がつき、本人、家族が治療に同意する必要があります。
突然の出来事に戸惑う中で、ご家族は医師からの説明を受けてもしっかり理解することが難しかったり、気が動転して自分で判断できず「先生にお任せします」という気持ちになる方もいらっしゃると思います。
そういうご家族のために、落ち着いてご理解いただけるように作成した記事です。
rt-PA静脈注射療法について、どのような治療法なのか、どのような場合に選択されるのか、分かりやすくお伝えします。
それ以外の方にも、知っておくことであなたの周りの方たちの命を救うことになるかもしれないので、最後までお読み頂ければ幸いです。
もくじ
脳梗塞とは
脳梗塞とは脳の中の血管が狭くなったり、詰まったりすることで、その先の脳神経細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなる病気です。
酸素や栄養が届かない脳神経細胞は仮死状態となってその機能を果たせなくなり、やがて壊死してしまいます。
壊死してしまった脳神経細胞は生き返ることはできません。
死んでしまった脳神経細胞が担っていた機能ができなくなるという後遺症が残ることになります。
脳梗塞についてはこちらの記事も合わせてお読みください
rt-PA静脈注射療法とは
rt-PA静脈注射療法は脳梗塞の治療法の一つです。
現場では、次のような表現がされるかもしれませんが、全て同じ治療法を指しています。
- rt-PA(アールティーピーエー)
- t-PA(ティーピーエー)
- アルテプラーゼ静注療法
- 血栓溶解療法
この薬は血管を詰まらせている血の固まり(血栓)を溶かす作用を強める薬で、血栓を溶かし血液を再開通させることができます。
血液が行き届かず壊死してしまった脳神経細胞は生き返りませんが、いわば仮死状態になっている脳神経細胞はできるだけはやく血流が再開通することによって、息を吹き返す可能性が高まります。
壊死する脳神経細胞が少なければ少ないほど、後遺症も小さくてすみます。
rt-PA静脈注射療法のリスク
効果も高いのですが、リスクも大きいのが薬です。
この薬を使うことによって、出血しやすくなる副作用もあります。
ひとつ間違えば脳梗塞に加えて、さらに脳出血も合併してしまう可能性があります。
そうなると、薬を使わなかったほうが後遺症が軽かった、ということも起こりえます。
また、薬が効かず血栓を溶かすことが出来ない場合もあり、その時には後遺症が残ってしまいます。
リスクを回避するために
日本脳卒中学会はrt-PAを適正に使用するために、CT(またはMRI)検査、一般血液検査と凝固学的検査、心電図検査が施行可能であることや、担当医師が速やかに診療を開始できる体制、万が一に備えて脳神経外科処置が迅速に行える体制があることなど、使用条件を厳しく定めています。
発症時刻を確認して速やかに医療機関へ
もう一つ大切なことは、この薬は発症から4.5時間以内に投与を開始しなければいけないということです。
ACT FAST(すばやく行動せよ)でチェックして、もしも脳梗塞(脳卒中)が疑われるようであれば、速やかに119番し救急病院にかかることが、その後の後遺症を少なくするためには重要です。
- F (Face 顔)…笑顔ができますか?
- A(Arm 腕)…腕を平行に保つことができますか?
- S(Speech ことば)…いつもどおり、おしゃべりできますか?
☆一つでも当てはまったら、T(Time 時間)を確認してすぐに病院へ
ACT FASTについてはこちらの記事を参考にしてください
t-PAが使えない場合もある
朝、目覚めたら手足が麻痺していたなど、発症時刻がはっきり分からない場合は残念ながらt-PAは使うことができません。
また、発症時刻がはっきりわかっていても、4.5時間以上経過している場合もつかうことができません。
また、あまりにも大きな脳梗塞の場合も使えません。
まとめ
脳梗塞を救うrt-PA静脈注射療法を受けるためには、脳梗塞が疑われるような症状がでたらできるだけ早く、専門の医療機関で診察を受けることが一番重要となります。
家族や周りの人を救うことにつながります。
脳卒中についてはさらに知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。