
高齢者認知症や脳卒中後などの嚥下障害で、口から食べられないと診断され、今後どうするかを考えるにあたり、医師から大抵次の4つの選択肢があげられるのではないかと思います。
- 鼻からチューブを入れる
- 胃ろうをつくる
- 点滴で高カロリーの輸液を入れる
- 何もしない(必要最低限の点滴だけする)
ここでは、「点滴で高カロリーの輸液を入れる」方法について分かりやすく説明します。
こちらの記事も合わせてお読みください
胃ろうについて
経鼻経管栄養について
栄養を入れるための点滴
栄養を入れるための点滴は鎖骨下にある太い静脈(中心静脈)に2㎜程の径の細い管(カテーテル)を入れポートを留置します。
そこに高カロリー輸液を接続し、滴下で入れます。
高カロリー輸液が中心静脈に入るとすぐに心臓に入り、心臓から全身にカロリーが回ります。
栄養分が多量の血液で薄められるため、高カロリーの輸液を入れることができます。
この方法を専門用語で中心静脈栄養(CV)や完全静脈栄養(TPN)と呼びます。
このブログでは中心静脈栄養で統一していきます。
普通「点滴」というと腕に針を刺すイメージがあると思いますが、これは末梢の静脈を使って主に薬剤や補液を入れる目的に行われます。
末梢静脈はとても細く、高カロリーの輸液を入れると、静脈炎などを引き起こすため、末梢静脈からは必要栄養量分のカロリーを入れることはとても難しいのです。
中心静脈栄養のメリット
中心静脈栄養のメリットは、点滴だけで人間が生きていくために必要な5大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラル、ビタミン)をすべて賄うことができることです。
胃や腸などの消化管に疾患があり、食物が消化吸収できない場合でも、中心静脈栄養を用いることで、栄養を摂ることができます。
怖い合併症~中心静脈栄養のデメリット
中心静脈栄養は様々な合併症を引き起こす可能性があります。
中でも一番怖いのは、カテーテルで感染を起こし、それが全身で炎症反応を起こす敗血症です。
高カロリーの輸液がすぐに心臓に入り、全身をめぐるのは中心静脈栄養のメリットですが、ひとたび感染を起こしてしまうと、炎症反応も一気に全身に広がってしまいます。
敗血症を防ぐためには、日々のカテーテル周囲の観察や体温の確認など、こまめな管理が重要になります。
医師や看護師による管理が必要となるため、中心静脈栄養の患者さんは看護師が24時間常駐していない施設では受け入れられにくいですし、在宅で介護する場合にも、手厚い医療サポートが必須となります。
その他の合併症としては、高血糖、肝機能障害、電解質異常、血栓性静脈炎などがあります。
どのような場合に中心静脈栄養を選択するか
胃を摘出してしまっていたり、消化管閉塞(イレウス)など、何らかの疾患で胃や腸を使うことができない場合、栄養を補う手段として、中心静脈栄養を選択します。
基本的に、胃や腸を使うことができるのであれば、経鼻経管栄養や胃ろうの方が選択されます。
どうしても胃ろうが作れない場合などをのぞいて、脳卒中後の嚥下障害で口から食べられなくなってしまった方に中心静脈栄養を選択されることは少ないのではないか、と思います。
中心静脈栄養は必要な栄養素を点滴だけでまかなうことができてしまうため、体力さえあれば生命活動を維持することができます。
人生の終末期に安易に選択することによって、望まない延命につながることもあります。
延命治療の考え方についてはこちらの記事をご参照ください
まとめ
点滴で高カロリーの輸液を入れる中心静脈栄養について詳しくお伝えしました。
中心静脈栄養は
- 胃・腸の消化器に疾患があり、食べ物を消化吸収できない状態の時に用いられる
- 重篤な合併症を引き起こす場合もある
- 延命治療の1つである
このような内容をよくご理解していただき、他の栄養を摂る手段と比較して選択することが大切です。
他の栄養を摂る手段についてはこちらをご覧ください
人生の終末期に口から食べられなくなったら、こういう考え方もあります
摂食・嚥下障害についてさらに知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。
口から食べられなくなった場合の延命治療についてはこちらの記事をご覧ください。
つばめ様
初めまして。mimanaと申します。
84歳の父親がH29年10月6日から入院しておりますが、病院側から説明があまり得られない不安から、調べていてこちらのサイトを読ませていただきました。
とてもわかりやすく、医療に素人の私でも父親の状態が理解することができて安心いたしましたました。お礼を申し上げます。
下痢が止まらなくて受診をしてそのまま入院、腸が機能していない、多臓器不全の初期段階と診断され食事が取れなくなって、延命は希望しないと伝えましたが、説明はないまま中心静脈栄養法が始まっていました。
入院後何度か、この週末が山といわれてきましたが4ヶ月目に入りました。
鼻に酸素チューブをつけていますが、常時口をあけています。
1月に入って、口内が出血して血まみれになっているのに気づきました。
身体の皮下出血と同じで老衰によるものと看護師長から説明されました。
1月12日(金)に左鼻から出血していて、鼻血がたらたらと流れているのに驚き聞きましたら、看護師長から、口内の出血と同じで酸素チューブで粘膜に傷がついているからといわれました。
看護師長からこの2,3日が山だと言われたのですが、血中酸素は98から100あり、呼吸も穏やかで疑問に思って調べていました。
原因が部屋の空気の乾燥であるなら、どちらの出血も納得です。12月に入ってから部屋の暖房が強くなっていました。
私自身が連日通いつめて年末から体調を崩したことと、何度も仕事を休んで病院に走っているので、どこまで無理ができるのか今後を悩んでいました。
栄養剤を入れているので、病院関係者でも死期が予想つかないのは理解できます。
家族はゴールが見えないまま、病院に通い続けます。
この病院には同じ状態の高齢者が何十人もいるので、同じ思いをしている家族がたくさんいます。
何が延命治療なのか、実際に親がこの状態になって初めて考え、変化が現れる度に調べて知りました。自分の無知を恥じ入るばかりです。
意識があり、あーあーと苦しげに訴えてくる父親に謝るしかできなくて辛いですが、自分の目で様子を見ると安心できますので、自分が納得できる看取りをしていきたいと思います。
要介護5の母親が施設で生活していて、母親の終末期にはどうするか家族で話し合って病院に伝えられるよう、この経験を胸に止めておこうと思っています。
54歳の私が高齢になる頃には、もっと穏やかな最期を迎えられる医療になってほしいし、子どもたちが悩まないよう自分の意思を書いておこうとも思います。
色々な情報を掲載いただいて助かりました。ありがとうございました。
mimanaさま
お父さまのこと、ご心中お察し申し上げます。
少しでも記事がお役に立てたようで、光栄です。
mimanaさまはお父さまに対して謝っておられるとのことですが、
こうして精一杯情報を調べ、ちゃんとお父さまと向き合っていこうとされている姿は、
ちゃんとお父さまにも伝わっているのだと思います。
死期は誰にも分かりません。
だからこそお辛いかもしれませんが、無理をせず、他のご家族とも協力し合って、
その時を迎えてください。
ご自分を大切になさることも忘れずに。
コメントありがとうございました。
つばめ