
みなさん、健康診断は毎年受けていますか?
健康診断は気がつかない間に進行している生活習慣病に気づくチャンスです。
この記事で、実際に健康診断の結果と照らし合わせながら、自分の健康状態をチェックしてみましょう。
その結果を踏まえ、もし生活習慣病の症状があった方のために、対処法もお伝えしますね。
もくじ
生活習慣病とは
テレビや雑誌で「生活習慣病」ということばはよく耳にする言葉だと思います。
昔は歳をとるとともに起こると考えられており、「成人病」と呼ばれていました。
でも、最近では子どもでも生活習慣病になる場合があるようです。
生活習慣病とは、日々の生活習慣の積み重ねによって、少しずつ体に負担がかかり、その結果引き起こされる様々な病気の総称です。
悪い影響をおよぼす生活習慣の例
一生懸命仕事をして、忙しすぎて食事をちゃんととる余裕がなければ、コンビニやお菓子ですませてしまったり、ストレスをたばこやお酒で発散したり、残業続きで毎日寝不足…なんて働き盛りのサラリーマンにとっては「日常」なことなのかもしれません。(極端な例です。個人差もあります)
当たり前のこと過ぎて、良くないことという意識が薄かったり、良くないこととわかっているけれども、なかなかやめられなかったりするのが多いのではないかと思います。
また、このような生活習慣を続けていても、体は何ともなくて、毎日元気だと、「まぁ、いいか」とやり過ごしてしまうのです。
生活習慣病に気づくきっかけは健康診断
体に良くない生活習慣を続けることによって、確実に体に負担をかけます。
この時には自覚症状は出ませんが、健康診断の血液検査などで数値として現れることがあります。
その指標となるのが高血糖、脂質異常、肥満、高血圧の4つです
高血糖
炭水化物を摂ると、胃・腸で消化され、ブドウ糖として血液にのって全身をめぐります。
そして体中の細胞や、筋肉のエネルギーとして使われます。
そのブドウ糖の処理をしているのが、ホルモンの一種インスリンですが、インスリンが分泌されなかったり、インスリンが効かなかったりすることで血液中のブドウ糖が処理されないことがあります。
この血液に含まれているブドウ糖の濃度が高い状態を高血糖といいます。
空腹時血糖
健康診断の前日の夜から食事をせず、空腹時血糖を測定することが多いと思います。
空腹時の血糖が、110㎎/dlよりも高い場合は高血糖と診断されます。
また食後に血糖値を計った場合(食後2時間後)は140㎎/dlよりも高い場合に高血糖と診断されます。
さらに、食後2時間後に200㎎/dl以上の場合は糖尿病の可能性が高いと判断されます。
ヘモグロビンA1C
ここで注意して頂きたいのが、空腹時の血糖値が正常範囲内だったとしても、食後の血糖値が高く、また下がりにくい「食後高血糖」という症状の可能性もあります。
健康診断の項目に、ヘモグロビンA1Cという項目はありませんか?
これは血中で赤血球がブドウ糖と結びついた量を示す値です。
ヘモグロビンA1Cが5.8%以上だと要注意、6.5%を超えると糖尿病の可能性が高いと判断されます。
空腹時血糖 126㎎/dl 以上
HbA1c 6.5%以上
75%ブドウ糖負荷試験 200㎎/dl 以上
(120分後)
随時血糖値 200㎎/dl 以上
この4つの指標のいずれかが、
この値以上だった場合再検査をします。
2回めもこの値以上だった場合、
糖尿病と診断されます。
糖尿病についてはこちらの記事に詳しく書きました。
脂質異常症
脂質とは炭水化物(糖質)、タンパク質と合わせて3大栄養素の一つで、コレステロールや中性脂肪など様々な種類があります。
以前は高脂血症とも呼ばれていましたが、脂質は体内ではエネルギー源や細胞膜をつくるなどの働きがあり、多すぎても少なくても問題となります。
そのため、現在は脂質異常と呼ばれています。
血中のコレステロール値、中性脂肪値によって脂質異常症の診断がされます。
尚、よく誤解をされるのですが、コレステロールは善玉コレステロール(HDLコレステロール)と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)がありますが、それぞれに役割があり、善悪があるわけではありません。
脂質異常症 基準値
LDL(悪玉)コレステロール
LDLコレステロールは血管を通ってコレステロールを全身に運ぶ役割をします。
LDLコレステロールが増えすぎてしまうと血管に大量のコレステロールが貯まってしまいます。
LDLコレステロールが140㎎/dl以上の場合、高LDLコレステロール血症と診断されます。
HDL(善玉)コレステロール
HDLコレステロールは血管に残っているコレステロールを集めて肝臓に運ぶ、いわばお掃除役です。
なので、HDLコレステロールが少なすぎると、血管に余分なコレステロールが残ったままになってしまいます。
HDLコレステロールが40㎎/dl未満の場合、低HDLコレステロール血症と診断されます。
中性脂肪
中性脂肪は糖質、タンパク質、脂質が体内で使いきれなかった分を、いざという時のために蓄えておく貯蔵のエネルギー源です。
中性脂肪はトリグリセライドとも呼ばれます。
中性脂肪値が150㎎/dl以上の場合、高トリグリセライド血症と診断されます。
HDLとLDLのバランス LH比
数値が基準値内におさまっていたとしても、実はLDL(悪玉)コレステロールとHDL(善玉)コレステロールのバランスが悪い場合があります。
以下の式で確認しておくとよいでしょう。
non-HDLコレステロール値
最近の研究では、LDLコレステロールよりも小さいレムナントコレステロールが悪影響を及ぼしていることが分かってきています。
そのレムナントコレステロールの値も計算で算出することができます。
肥満
肥満とは太っている状態のことを言います。具体的には体脂肪量で判断されます。
今は体重計で体脂肪も図ることができるようなものもありますが、身長と体重から計算して出すBMI(Body mass index)という指標があります。
BMI = 体重(㎏)÷ (身長(m)×身長(m))
このBMIの値が25以上になると肥満と診断されます。
25以上になると、高血圧、糖尿病、脂質異常などのリスクが2倍に高まると言われています。
高血圧とは
この時に、血液がどのくらいの力で血管壁を押しているのかを数値化したものが「血圧」になります。
収縮期血圧140mmhg以上、拡張期血圧90mmhg以上で高血圧と診断されます。
放置するとどうなる?
高血糖、脂質異常症、肥満、高血圧は、それぞれ単独でなることはあまりありません。
たいていは2~3つ重なって症状が進んでいきます。
そのまま放置すると、血管が動脈硬化を起こします。
心臓の筋肉を動かす血管で詰まると、狭心症、心筋梗塞を起こします。
脳の血管で起これば、脳梗塞を起こします。
いずれも、命に危険が及ぶ重篤な病気です。
また一命をとりとめたとしても、後遺症が残ったり、寝たきりになる可能性もあります。
動脈硬化についてはこちらの記事を参照してください。
生活習慣病改善のために
まずは日頃の生活習慣を見直すことからはじめましょう。
高血糖が気になる方は糖質制限を意識してみましょう。
脂質異常症の方はこちらを参考にしましょう。
高血圧の方はこの記事が参考になります。
まとめ
- 生活習慣病は、日々の生活習慣の積み重ねによって少しずつ体に負担がかかり、その結果引き起こされるさまざまな症状のことを言います。
- 生活習慣病になっても、その症状は目に見えず、なかなか自覚できません。年に一度の健康診断が生活習慣病に気づく1つのチャンスです。
- 生活習慣病の指標となるのが、高血糖、脂質異常症、肥満、高血圧です。
- 生活習慣病を放置すると、動脈硬化を進行させ、脳卒中や心疾患などの重篤な病気を引き起こす可能性が高くなります。
- 日頃の生活習慣を見直し、症状がなくても今から対処することが大切です。
私はいつも脳卒中後の患者さんのリハビリを行っています。
脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)は重い後遺症が残ってしまったり、最悪の場合には死に至る恐ろしい病気です。
後遺症が残れば、これまでどおり仕事もできなくなれば、好きなこともできなくなり、生活が一変します。
日常生活で介護が必要となれば、家族にも負担がかかります。
脳卒中になり、嘆き悲しむ患者さんの姿をたくさん見てきました。
脳卒中は突然起こるのですが、私たちの気づかない間に、実は体の中では少しずつ病気の素が作られています。
病気の素が蓄積していく間は、症状が出ないので私たちは気づくことができませんが、皆さんが受けられる健康診断の結果から、今の自分の状態を知ることは可能です。
皆さんの健康診断の結果はいかがでしたか?
高血圧、脂質異常、高血糖、肥満は日頃の生活習慣から蓄積された結果としてなるものです。
どれか一つでも異常値に引っかかるようであれば、それは生活習慣を見直すタイミングであり、まだ今のうちに見直すことで、悪化を防ぐことができるのです。
できれば、脳卒中は防ぎたいもの。
健康診断の結果と照らし合わせて、自分の今の状態を確認してみませんか?
生活習慣病についてさらに知りたい方は、こちらの記事をご覧ください